第一試合/藤枝明誠×中京会場は藤枝総合運動公園サッカー場。気温は30℃近くあるんでしょうが、風が涼しく感じられるところに季節の移り変わり、秋の気配を僅かに感じます。 【画像①/良い天気。空がキレイです。】 【画像②/試合前の挨拶。黄色が明誠、白が中京です。】■試合開始。明誠は4-1-2-3、中京は4-2-3-1の並びに見えました。まず、キックオフに備えてとった明誠のDFラインの位置取りが非常に高いことにびっくり。おおっ?!と思って見ていると…なるほど。選手の距離を縮めて、前線から積極的にプレスを掛けていくサッカーを志向しているんですね。また選手間の距離は攻撃でも意識されていて、ビルドアップもDFラインに入った8番の選手を中心に、GKを含めてしっかりと回して…。そのうちCFの9番が裏を狙ったり、WG選手が絞ってきたり、するとCHやSBの選手が空いたサイドのスペースを狙ったり。動いてスペースを狙う、それによりスペースを作り、そのスペースを使う…といったように、ポジショニングに気を配りながらプレーしている様子が窺えました。これに対し中京は、DFラインにはプレッシャーをかけず、追いかけだすのはアンカーのライン辺りで引いて守る形。このため試合は、明誠はビルドアップの練習、中京はブロック形成の練習、といったような格好で進みました。 【画像③/ゴールキックはこんな感じ。両CBが大きく開いて、GKもビルドアップに参加します。】■前半は完全に明誠ペース。試合は明誠がコントロールしながら進みます。すると給水タイム前くらいからはいくつかチャンスが。CHの18番だったかな?隙間でボールを呼び込むとワンタッチで前を向いて(この判断が良かった)スルーパス。これでSBの裏をとったWGが抜け出しクロスを送ると、逆サイドのWGが絞って飛び込みましたが、これはその手前で中京DFが辛うじてクリアしました。続けて明誠のチャンス。中京のDFが中盤に預けにいった不用意なパスをカットするとそのままショートカウンター。抜け出したクロスのこぼれ球からミドルシュートを放ち、これはゴールを捉えませんでしたが、際どい場面も作り始めました。明誠はショートカウンターもそうですが、活発なオフ・ザ・ボールの動きにより中央の隙間でボールを受けて、そこで引き付けてから駆け上がったSBへ展開→そこからのクロスにFW3人+CH2人が飛び込む…といったサイド攻撃が、流れもスムーズだし迫力も感じました。誰が巧い、という事ではなく、選手全員がスペースの使い方に対しての意識を持てているのが素晴らしいですね。それはコーチングの声にもあらわれていて、他校と比べて明らかにポジショニングについての指示が多かったと思います。そうして試合を支配できていただけに、明誠としては前半のうちに得点を奪っておきたかったでしょうが…。後は、もしリスクを冒して良いのなら(チームの意図とは違うかもしれませんが)、中盤で誰かがドリブルにチャレンジしても良かったかもしれません。一枚剥がす事で、相手DFはボールウォッチャーになってマークのズレが生まれるでしょうから、もともと掴みにくい明誠の攻撃陣は更にフリーになるチャンスが生まれたかもしれません。そうしたプレーは、実際は、サイドの高い位置では見られていました。ここならリスクを冒してもOKという事かな。ここからのカットインには何度か成功していたし、それで中のマークをズラす、もしくは絞らせた大外を使うのも良いかもしれません。■後半、明誠が寄り切りにいったところで試合のバランスが変化しました。明誠はCFに入っていた9番を下げて17番をCHに投入し、空いたCFの位置にはDFラインにいた8番が入りました。これに合わせてCHの14番がアンカーに、アンカーの18番がDFラインに(14番と18番は逆だったかも?)一列ずつ下がります。これで試合のバランスが少し変化しました。フィニッシュへの意識が高まり仕掛けのプレーが増えた明誠に対し、中京もその跳ね返りを拾ってのカウンターチャンスが生まれてきて。「土俵際まであと少し。よし、このまま寄り切ろう!」…と明誠の重心が前に偏ったことで、中京には体を入れ替える隙が生まれた感じ。前半はノーチャンスに思えましたが、却って勝ち目が出てきたかも。なんて思っていたら。右サイド、一発で抜け出した7番のクロスから中央に飛び込んだ8番のヘディングが決まって中京が先制。なるほど、リスクを冒すとやはりこういう事になりますか…。うーん、サッカーってこんなものですね。明誠は、先制されて苦しくなった状況なのでどうしても粗の方に目が行ってしまいますが…8番の前線起用は決め手として、もしくは踏み込んだ位置での起点としての期待を背負ってのだと思いますが、前半に出場していた9番と比べてオフザボールの動きが少なく(動き過ぎるなという指示?)、スペースを狙って→作って→使って…という明誠の良さが薄れてしまった感じがしました。そのためDFラインからのビルドアップもぎこちなくなり、トランジションが増えた分体力的にもしんどくなるし…。終盤へ向けて、この流れは厳しそう。しかし、そこはなんとか。明誠はセットプレーからのこぼれ球を18番が蹴り込み同点とします。ボールそのものは決して質が高かったとは思いませんが、放り込まれた位置が丁度空間というか、GKとDFが重なるような位置で、結果GKの処理がうまくいかず、近くにこぼれたところを思い切りよく蹴り込んだゴールでした。その後は両チームの攻め合い。同点に追い付き意気上がる明誠は、畳み掛けるように攻撃を繰り出しますが…中京はこれを利用してのカウンターで対抗。こぼれ球を少ない手数で前線へ供給しシュートチャンスを作ります。そしてその後、その構図そのままのような得点が生まれました。明誠の攻撃。ゴール前でクリアをもたつく中京DFに、チャンスとばかりに次から次へと襲いかかりましたが…ここで奪い切れずにカウンターを許します。すると中京は一気に右サイドを突破し、PA内に侵入して放ったシュートは、ブロックに入ったDFの足に当たると絶妙な弧を描きGKを頭上を通過して…終盤、中京が再度リードを奪いました。ガックリくる明誠の選手達。DF陣は膝をついて立ち上がれないくらい。ただ、ここで監督からの激しい檄が。まだ終わっていない。立ち上がって、もう一度試合と向き合います。するとその気迫が通じたのか…。ロスタイム、もうこのワンプレーで、プレーが切れたら終わりだろうと思われた最後のチャレンジ。明誠の放ったミドルシュートが枠を捉えると、GKが弾いたこぼれ球、必死に食らいつくと、競り合いを制して泥臭く押し込み同点。そして試合終了。なんともドラナティックな幕切れとなりました。■地元の明誠が追いつき、スタンドは盛り上がっていましたが…。試合内容からしたら、明誠は勝たなければいけない試合だったと思います。負けなかった、追いついた根性は評価できますが、監督も選手も、試合運びに関しては納得していないのではないでしょうか。明誠の印象としては、選手全員がチームに対しての意識を持っていて、常に全体最適を意識してプレーしているのがよく感じられました。試合前のアップも特徴的で、ハーフコートの10対9で、しっかり配置を組んでのプレスを掻い潜る練習vsプレスを掛ける練習をやっていたり。ミニゲームでの鳥かご的なトレーニングは一般的ですが、フォーメーションを組んでやる辺り、局面での判断に加えて全体との関係への意識が必要になってくるでしょうから、そうして全体最適を意識させているんでしょうね。そのような意図がしっかりと成果としてもあらわれていて、チーム自体の完成度としては順調なんだと思います。個別の印象では…GKのコーチングとキック精度、DFラインでの8番のビルドアップ、他に両SBは上がりのタイミング、キックの質が良かったと感じました。よく練習しているのだろうなぁ、と。個人的には、後ろからの声が大きいチームほど良いチームだと思うので、後は決めに行って決めきれるチームに…。そんなチームなどそうそう無いけど、そこへの挑戦ですね。セットプレー…は近道だけど、そこは最後でしょうか。一方の中京は…この試合ではリアクションに徹していた(そうなってしまった?)ため、チームの特徴はあまりわかりませんでした。一番印象に残ったのは、岡山監督の大きな声?!少し苛立っているような素振りも見られたり、狙いが実行できていないもどかしさみたいなものがあったのかもしれないですね。観戦者としては、もう少し中京のカラーも見てみたかったです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第二試合/清水商業×浜松開誠館ネームバリューでいえば清水商業ですが、浜松開誠館はなんといっても東海プリンスで首位を争っているチーム。それだけに、その実力を見てみたかったし、もちろんどんなサッカーをするのかも興味がありました。 【画像④/試合前の様子。だいぶ影が伸びてきました。】■試合は“戦い”。非常に激しいものとなりました。並びは4-2-3-1同士に見えましたが、この試合ではそうしたシステムとか、戦術についての考察はあまり必要なかったかも?!立ち上がりから両チームともかなり激しく、例えば守備でも、パスカットにいくのではなく奪い取りに、もぎ取りに行く感じ。そして奪ったら縦への志向も強く、一直線にゴール前へ。そして、それは清水商業の方がより強く、とにかくシンプルに、難しければ蹴り出す。そして追い掛ける。また相手陣内では、足を振る余裕あればミドルゾーンからでも即クロス、といった感じ。一方の開誠館も縦への志向が強く、とにかく局面で競り勝つという意識が強いパワフルなサッカーでしたが、清水商業と比較すると、開誠館は中央からの崩しも含まれていたかな。他には、両チームとも声がよく出ていた点も似ていましたが、例えば第一試合の明誠の声がコーチング…ポジショニング、動き方についての指示だったのに対して、この2チームの声は励まし系。とにかく気合が感じられます。試合は、そんな両チームだけに、ショートカウンターの応酬…キレイに言えばそうなりますが、要は蹴り合い。キック&ラッシュの“戦い”でした。本当に、大袈裟でなく、ボールが落ち着いているのはGKが保持している時だけなんじゃ?!というくらい。いつの間にか藤枝サッカー場は、ボールを蹴る音と身体がぶつかる音がバチバチ鳴り響く、格闘場のような空間になっていました。両チームとも、掛け声は「落ち着け!」とか「焦るな!」とか飛んでいるんですけど、一向に落ち着く気配は無く。あんまり行ったり来たりのサッカーなんで、それを追いかけて見ていると、なんだかテニスのラリーを見ているような気分になりました(苦笑)。振り返ると、全体で言えば清水商業が押していたんでしょうか…。クロスの本数は多かったと思います。それは、かなり早いタイミングで放り込む判断があっての事だと思いますが。左右からの崩し、一度クロスがドンピシャで合ったシュートもありましたが、飛び込んだ7番のヘディングは惜しくも枠を捉えませんでした。一方で開誠館も、ゴール前での混戦からこぼれ球蹴り込むチャンスがありましたが、清水商業の身体を張ったブロックで決まらず。右サイドからの攻撃、クロスのディフレクトがファーサイドへ流れた場面…大きく浮いてきたボールを捉えた10番のボレーシュートは見事でしたが、これはGKのビッグセーブに遭い得点ならず。 【画像⑤/開誠館のCK。密集してGKの動きを制約する狙い?清商は、昨年の選手権で、市船にこれをやられて敗退していますね。】■試合は0-0で終了。このタフな展開で一歩も引かなかった両チームからは強さが感じられて、開成館がプリンスで上位につけている理由もわかった気がしました。とにかく力強い。また、この試合では両チームの噛み合わせで蹴り合いになってしまい、見ていて印象に残るようなプレーは少なかったかもしれませんが…。敢えて挙げるのなら、開誠館の7番とか。激しい展開の中、ドリブルの成功率がかなり高かった印象で、彼は奪われないなぁ~と思いながら見ていました。この環境で奪われないのだから、なかなかのキープ力だと思います。それと、14番の左足。ボールの持ち方も、懐が深いタイプで面白かったですが、遠目からでも迷いなく振り抜いた左足の威力は十分で、所謂“スケールの大きさ”を感じさせてくれる選手だと思いました。一時期は、静岡では清水商業、全国では千葉の市立船橋、そして長崎の国見がこうしたパワフルなサッカーを見せてくれましたが、パスワークが重視される最近だと却って新鮮に感じますね。これはこれで、足腰が鍛えられて良いのかもしれません。実際、両校の昨年の卒業生からは、風間、木下といったプロ選手が生まれているワケだし。今年の静岡は昨年、一昨年の静岡学園ほど抜けた存在が無いと感じるので、選手権の頃にはどういう力関係になっているのか…それも楽しみです。
↧