静岡県大会もいよいよ決勝を迎えました。全国へ―最後の椅子を争うのは、攻撃の藤枝明誠と守備の常葉橘。どちらが勝っても、2度目の本大会出場となります。 【画像①/橙:藤枝明誠×青:常葉橘。決勝戦らしく、両校の応援団も多人数でした。】試合開始。序盤は決勝戦らしく?どちらのペースにも落ち着かない展開。藤枝明誠がサイドを変えるような横パスの繋ぎからシュートを放てば、常葉橘も12.鈴木のドリブル突破でチャンスを探ります。先に決定機を迎えたのは藤枝明誠。左サイドからのCK、10.小林が左足でアウトスイングのボールを送ると、ニアサイドに飛び込んだ選手がヘディングシュート!これがループシュートのような格好となり、GKを超えファーサイドへ―。決まったかと思いましたが、追い掛けた目線の先、ボールはポストに当たり跳ね返りがGKの元へ。開始して間の無くのビッグチャンス。決まっていたら、藤枝明誠の一方的な試合になりかねない際どいシュートでしたが…ここまで今大会無失点の常葉橘は運も持っている?!■常葉橘の陣形はこれまでと変わらず4-1-4-1。ただ守備に戻ると…6-3-1と表現しても大袈裟ではないくらい、ワントップの23.小澤を残して全員で守ります。■これに対しての藤枝明誠。スタメン発表では登録上0トップになっていましたが(実際はMF登録の8.高須がワントップ)、8.高須はサイドに流れるなど幅広く動くし、そうして空けたスペースには中盤から7.嘉茂、10小林らが上がってくるなど、活発なフリーランをベースにショートパスの繋ぎから打開を図ります。ただ流れようが入れ替わろうが、常葉橘が常に多人数でスペースを埋めているため、そこまで大きなチャンスは作れそうになく。逆に引っ掛けられてカウンターを食らうリスクもあるため、前半の藤枝明誠は比較的そのリスクを意識したサッカー…長めのボールも使いながら常葉橘DFラインの裏を狙って、その落下地点を起点に人数を掛けるような戦い方をしていたと思います。■前半は、そうした均衡状態が破られず0-0で終了。常葉橘はこの戦い方一本でしょうから、動くとしたら藤枝明誠の方でしょうか。常葉橘はCBの4.登崎、5.石川に加えて7.石井が締める中央は守りが堅く、その脇も6.久保山14.池田がスペースを消しているから隙が見当たらず…。例えば、14.金子、10.小林、7.嘉茂が低い位置へ下りてきてボールを引き出し6.久保山、14.池田らを誘き出しバイタルを狙うとか、CBの3.濱、4.大坪が大きく開いてSHの10.島田、12.鈴木を誘き出しサイドでの数的優位を作り出すとか、とにかく何か工夫しないと動きそうにない展開。ただ誘き出しておいて、そこで奪われたら…当たり前ですが、それは常葉橘の大きなカウンターチャンスに繋がるので…。藤枝明誠がどのタイミングで、どのようなリスクを冒し、どんな工夫を見せてくるのか。形勢が動くとしたらその辺りかもしれません。 【画像②/GKからのキック。両チームとも縦・横を狭めたコンパクトな布陣。】 【画像③/常葉橘のFK。左下の青い点がキッカーです。かなり深い位置からでも、5.石川を上げロングボールで狙います。】■後半、藤枝明誠の動きが活発に。勇気を持って縦パスを、DFラインの裏だけでなく、手前にも入れるようになってきた感じがしました。そこを起点に複数の選手が飛び出して、攻撃が一気にスピードアップします。「蹴風の如し」のスローガン通り、迫力ある、流れるような攻撃。風に形はなく、壁の隙間を縫うように侵入して行きます。常葉橘は苦しい時間帯。なんとか最終ライン、最後のところで踏みとどまってはいましたが、ここで防いでいる限りカウンターチャンスは見込めないので…。本当はもう一列前で引っ掛けたかったと思うのですが、藤枝明誠のパスワークから目を離さないのがやっとで、狙いを持って(インターセプトを狙って)の守備は難しかったです。■後半20分頃、先に動いたのは常葉橘。ワントップに入っていた23.小澤に代えて11.前田を投入します。これは試合前から決めていたのかな?11.前田はドリブルができる選手なので、攻撃に溜めができて常葉橘も前へ出られるようになりました。常葉橘は、攻撃はそうした前線の選手の個人技に期待。10.島田もドリブルが上手でが孤立しながらも巧みにボールをキープします。そうして右サイド深くまで持ち込んだプレー、何度も切り返してファウルを得ると、このセットプレーから5.石川の飛び込み!僅かなチャンスを活かそうと、盾でもなんでも使えるものは武器に使って、強引な攻撃を見せます。続けて選手交代。常葉橘は12.鈴木に代えて18.石塚を投入。運動量の担保が目的でしょうか?とはいえ、決め手になり得る個人技を持った12.鈴木を下げるのは惜しい…。対して、藤枝明誠はSB2.山崎に代えて11.猪股を高い位置に入れて、6.熊谷がやや低い位置に移りました。より攻撃的に、という意図でしょうか。キャプテンを下げなければいけない辺り、こちらも苦しい選択です。■後半、半ば以降は常葉橘のペースに。前線にドリブラーが揃って、カウンターの威力が増したのかもしれません。右サイドからの崩し、10.島田、6久保山が絡んで8.松下が抜け出すと、ここで放ったシュート?のこぼれ球。跳ね返りを10島田が拾ってクロスを上げると、この処理に飛び出したGK1.町より一瞬先に常葉橘の選手がヘディングをヒット!高く上がったボールはそのまま吸い込まれるように無人のゴールへ―。観客も総立ち、これは決まったかと思いましたが、ここはなんと懸命に戻った藤枝明誠DFが空中のボールをボレーでクリア!あと数cmのところでゴールを割らせません。■大きなチャンスを決め切れなかった常葉橘。個人技で攻撃の起点になっていた10.島田に疲れが見え始めると、ちょっと攻め手が無くなってきて苦しい。すると、試合はもう一度藤枝明誠のペースに。後半の終盤、再び押し込み出します。パス&ゴーを忠実に守り、2,3人がゴール方向へ走りこんでパスコースを複数作ると、そこへダイレクトでパスを配給。DFを振り切るようなスピードでなんとか抜け出そうと仕掛けます。しかし常葉橘DFもしぶとい。橙のユニフォームが抜け出したかと思うと、その後ろから青いユニフォームがスッと出てきてボールをカット。影のように付きまとい、最後のところでフリーにさせません。■試合は80分戦って決着がつかず、10分ハーフの延長戦へ。常葉橘は10.島田のドリブルに期待したいところですが、疲労が心配。一方の藤枝明誠は、決め手になりそうな威力があるのは10.小林の左足でしょうか。セットプレー、クロスから質の高いボールを上げていたので、常葉橘は左足では蹴らせたくないですね。 【画像④⑤/延長前の円陣。気合いが入ります。】延長前半、選手交代。常葉橘は、中盤で奮闘していた6.久保山に代えて22.後藤を投入。■延長戦、攻め手を欠く両チームでしたが、常葉橘の11.前田の頑張りが目立ちます。ボールを持つと、かなり強引な選択ながら、ドリブルで前進。一人で右サイドを突破しPAまでたどり着くと、このこぼれ球がクロスとなりゴール中央に詰めてきた14.池田のもとへ。ここへは藤枝明誠DFが身体を投げ出してブロックに入りますが、14.池田は落ち着いてキックフェイントでこれをかわすと、すかさず左足でシュート!これは遂に決まったか?!と思いましたが、シュートは枠を捉えず。決定的でしたが、まだ試合は動きません。藤枝明誠も反撃。セカンドボールを狙ってのロングフィード、10小林が繋ぎながら中にポジションを移しながら右足でミドルシュートを放つと、これはDFにブロックされますが、このこぼれ球。DFラインの裏、絶妙なスペースに転がると、ここに藤枝明誠の選手が走り込ましたが…ここは判断良く飛び出したGK1.北郷がセーブ。集中しています。延長後半、終盤。攻撃を急ぐ藤枝明誠の縦パスに対し5石川がココゾ!のインターセプトを見せると、そのままフィールド中央を独走!前線で11前田が動き直す中、これを囮に右サイドへ走り込んだ選手へパスを送ると、ここからのクロス。中央の選手を経て、大外に走り込んだフリーの選手へ―。これも際どいシーンでしたが、パスがスムーズに運べなかった分、戻ったDFのカバーが間に合いシュートブロック。ギリギリの攻防が続きます。■試合は結局、100分間戦って決着がつかずPK戦へ。藤枝明誠→常葉橘→藤枝明誠と…3人が連続で外す異様な空気で始まりましたが、その次を決めた常葉橘が一気にペースを掴んで。そのまま優位を保って、最後は13.筒井が思い切って蹴りこんで2試合連続のPK勝ち。守って守って、遂には7試合連続完封で全国行きの切符を手に入れました。■試合を振り返って。常葉橘はとにかくセンターが堅かったです。GK1.北郷は判断が良く、ハイボールを含め飛び出しのタイミングが非常に良い。そして2枚のCB、、4.登崎と5.石川は高さがあり、但しそれに頼ることなく常にポジショニングに気を配るなど、集中力の高さも強みです。そしてその前を固める7.石井。バランスを意識し、敢えて難しいプレーは選択せずシンプルに、チームのリスク要因を排除します。そしてその脇も、6.久保山、14.池田がよく動きスペースを埋め、サイドも13.筒井なんかは非常に頑張れる選手で、身体は大きく無いものの、間合いを見極め1対1では相手チームの突破自慢を見事に抑えて見せます。また攻撃に関しては、11.前田はアグレッシブな姿勢でチームを元気づけていたし、10.島田、12.鈴木辺りは良いものを持っていたりと、決して武器が無いワケではないのですが…。今大会までに、そこを活かせるチームは作りは間に合わなかったか。それに伴っての、守備的な戦い。怪我の功名的というか、それにより結果を出してきたワケですが。堅い、スペースを埋める守り方は攻撃力とトレードオフの関係。攻撃力を望んで前へ出れば、最大の武器である守備力が失われるので、このバランス調整が難しいですね。攻めに出ればどうしても隙が出る。もし先制点を奪われてしまった時にジタバタできるか。或いは開き直って、絶対に点を奪われない戦い方を推し進めるのか。やっぱり後者かな?先を考えず、目の前の戦いに集中することで勝ちあがって来たチームですので、全国でも、とにかく頑張るだけですね。結果は、後からついてくる…と信じて頑張るのみです。一方の藤枝明誠。ハマった時のパスワークは見事で、どこからでも崩せるサッカーには監督も選手も手応えを感じていたでしょうから…この敗戦は本当に悔しかったと思います。設計したサッカーが実現しつつあっただけに。藤枝明誠は、前回優勝した時はプレスのチームと言った印象で、攻撃は前3枚の個人能力(CFの強さ+WGの速さ)に任せたショートカウンターというイメージでしたが…今回は攻撃もビルドアップから、スペースを作って、使って…引かれた相手でも崩してしまうようなサッカーができていて。決勝戦でもそうしたプレーが見られるかと思いましたが、やはり特別な試合。逸る気持ちを抑えられなかったか、結果論ですが、やや中へ前へ突っ込み過ぎてしまったかもしれません。もう少し誘い出すプレーが欲しかった。とはいえ、このサッカーが負けたワケではないので。2012年の藤枝明誠のサッカーは、システマチックで非常に面白かったと、しっかりと記憶しておきます。これで、第91回高校サッカー選手権大会は全ての代表校が揃いました。常葉橘の相手は、長崎県代表、長崎総合科学大学付属高校に決まっています。以前、同じ長崎県の国見で指導されていた小嶺氏が指揮を執るチームで、やはり国見と同じような力強いサッカーをするチームなんだとか。正面からの力押しであれば、浜松開誠館相手に負けなかったように、常葉橘のDFも勝負できると思いますが…。そんな力関係を意識しても仕方がないかもしれませんね。これまで、弱者の認識が結束を高めひたむきさを生み勝ち残ってきたチームです。どこが相手でもチャレンジャーである事には変わりありません。一戦必勝!走り勝ち、頑張り勝ち、あとは結果を待ちましょう。おめでとう、常葉橘! 【画像⑥/試合後の挨拶。勝ちとった切符、と同時に背負った責任。静岡を代表してがんばれ!】
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